ゆとり教育の前になぜ実験をしなかったのか

http://news.livedoor.com/ 2007年05月19日
パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏【京都府】

【PJ 2007年05月19日】− ゆとり教育の失敗がついに明らかになり、今後への模索が続いている。教育に関しては素人ながら、疑問に思っていたことがある。それはゆとり教育を実行する前に、なぜサンプル実験をしなかったのかということだ。

 ゆとり教育は、学習内容を3割削減したり、生徒が自発的に総合的な課題学習を行う総合学習の導入などがあるが、詳しいことは知らない。教科書の薄さや、円周率を3と教えることが学習内容の貧弱さを象徴することとして採り上げられる。

 2003年のOECD生徒の学習到達度調査(PISA)、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)による国際学力比較調査によって、日本の15歳の生徒の学習到達度の順位が大きく下がったこと判明した。また他の多くの調査によっても、学力低下はほぼ確実と考えられるようになった。

 学習内容の3割削減などという冒険的な変更は、学力が向上する、あるいは少なくとも低下はしないという予想のもとで実施されたのだろう。しかし、その予想に信頼できる裏づけがあったのだろうか、大いに疑問である。

 自然科学の分野における因果関係の解明は社会科学の分野に比べると簡単である。それでも実験は欠かせない手段である。化学装置や機械の分野でも「やってみなけりゃわからん」ということがいっぱいある。教育は複雑な分野であり、実験なしに結果を予想することは極めて難しい。

 「やってみなけりゃわからん」ことをテストもせずに、国を挙げてやったのであれば、そのこと自体が大きな問題だと思うのだ。そのおかげで数百万人の生徒の学力が低下したとしたら、大きな損失である。

 結果が大きな影響もつ重要な問題はサンプル実験をすべきである。プラントではまず小規模のテストプラントをつくって実験し、それから実証プラントとへ進む。新薬でも少数の対象者による治験を経て一般の使用が認められる。

 「やってみなけりゃわからん」ものはそれがあたりまえだ。教育でのサンプル実験は実験校と対照校を同時比較できるから、サンプルの選定さえ間違えなければ信頼できる結果が得られるだろう。今回のように日本中を実験台にしたのでは対照群がないので、結果の検証すら難しく、多くの年月を費やした。

 現在の日本は豊かな生活を享受しているが、それは輸出企業の強い競争力のおかげである。自動車・電機・機械・精密の四業種で輸出総額の約70パーセントを占め、上位30社の輸出額は輸出総額の50パーセント程にも達する。学力は競争力の源泉である。

 とくに数学・理科の学力低下は国力の低下に直結する。近隣諸国の競争力の向上がめざましいときに、大規模な学力低下は深刻な問題である。各地にある教育大付属の小中学校は教育実験の場として既に用意されている。なぜ文科省もメディアも教育学者もサンプル実験を考えなかったのか、私には不可解である。知っている方があればお教え願いたい。

 文科省の寺脇研氏らが主導したとされるゆとり教育だが、よってたかって、国全体を実験台にするような無謀な計画がなぜ実施にまで至ったのか。さらに失敗が明白になっても、誰も責任をとらなくてよいシステムのままでよいのだろうか。再びこのような失敗が起きないように組織のチェックが必要だと思う。【了】

■関連情報
PJニュース.net

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏【京都府】
posted by マリンちゃん at 12:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | ゆとり教育全般
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのTrackBack URL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/4066416
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。