全国学力調査 「ゆとり教育」批判覆すデータ

2007年4月17日 宮崎日日新聞
 学力低下の元凶と言われてきた「ゆとり教育」だが、どうやらそうでもないらしいことが分かった。

 全国の高校3年生15万人を対象に2005年に実施した学力調査結果がまとまった。

 旧指導要領の下で行われた前回(02―03年実施)との同一問題で比べると、正答率の上がった問題が、下がった問題を大きく上回ったのだ。

 「自ら学び、考える力」の育成を掲げた現行の学習指導要領で学んだ高校生への初めての大規模テスト。

 「ゆとり教育」批判は声高な教育再生論の根拠にもなっていただけに、学力低下論議に一石を投じそうだ。

 ■関心、意欲は改善傾向■

 一方で個別の教科・科目では、数学や理科などはあらかじめ想定した正答率を下回り、前回同様に低迷したままという厳しい現実も見せつけた。

 文部科学省は「理数などの課題は残るが、全体的には改善傾向」と控えめな評価をしている。

 しかし全体としてみれば、現行指導要領が授業時間を減らしたことが学力低下につながる、という批判への実質的な反論になっている。

 まず注目されるのは、現行指導要領が重視している関心、意欲や資料活用能力などの指標の改善傾向である。

 生徒に対する質問調査の結果では「勉強が大切」としたのは84%で、前回より5ポイントアップ。「勉強が好き」も22%で2ポイント上がった。

 各科目の勉強についても「好きだ」とする回答が、調査した全科目で前回より上昇。「授業が分かる」とする生徒も増えている。

 各科目でも、資料活用や関心・意欲などにかかわる問題の正答率が想定を上回る傾向が目立ち、英語のリスニングも前回より正答率が上がった。

 ■「量」より「質」の重視■

 この中で、数学は36問中25問が想定正答率を下回り、上回ったのはわずか3問。理科4科目はいずれも約半分の問題が想定を下回った。

 改善傾向となった資料活用の力も、資料を読み取った上で自分の言葉で表現する一歩踏み込んだ問題には課題を残している。

 全体としてこのデータは、指導要領が次第に浸透し始めた結果ともとれ、現行指導要領と学力低下をストレートに結び付けるのには無理がある。

 既に教育再生会議では授業時間10%増などの改革案を提示している。だが問題は、学習の「量」を増やすことではなく、「自分で考えたことを表現する」など学習の「質」改善にあることは明らかだろう。

 国語の古典では、前回と共通する4問中3問で正答率が低下した。文科省は古語などの基本的知識が欠けていたと分析している。

 この結果から指導内容を増やす動きが出てきそうだが、古文や漢文を好きだと思わないとの回答が7割を超えている。量を増やして詰め込む前に、どうしたら古典への興味を引き出せるか考える方が先ではないか。

 教育再生会議には、どんな学力を目指すのかという肝心の議論が欠けている。なぜ授業時間増なのか、根拠も示されないまま「ゆとり教育」見直しが独り歩きしているのだ。

 検証もないまま、政治がある種の思惑で現場をかき回すようなことがあってはならない。今回の調査を、冷静な教育論議に引き戻す契機にしたい。
posted by マリンちゃん at 09:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 学力低下
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