全国学力テストの狙い「新自由主義改革」の突破口

2007年4月15日 しんぶん赤旗 
 今月二十四日に全国の小学六年生と中学三年生を対象に行われる全国一斉学力テスト。六十六億円(二〇〇七年度)にのぼる税金を使って二百万人以上にテストを受けさせる狙いはどこにあるのでしょうか。

競争意識の涵養
 第一の狙いは子ども同士を競争させることです。

 〇四年十一月四日の経済財政諮問会議。中山成彬文部科学相(当時)は「教育改革」の方針の一つとして、「競争意識の涵養(かんよう)、全国学力テストの実施」を提案しました。席上、中山文科相は「子どものころから競い合い、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)する意識を涵養する。全国学力テストを実施する」と、子どもを競争に追い立てるのが狙いだとあけすけに語っています。

学校選択の指標
 第二の大きな狙いは、学校選択制とセットで「新自由主義教育改革」の突破口とすることです。モデルは一九八〇年代のイギリスの「サッチャー改革」です。

 安倍晋三首相は自著『美しい国へ』の中で、サッチャー改革を「壮大な教育改革」とほめたたえ、「全国的な学力調査を実施、その結果を公表するようにするべきではないか。…この学力テストには、私学も参加させる。そうすれば、保護者に学校選択の指標を提供できる」とねらいを語っています。テストの成績と人気度で学校を序列化するものです。

 規制改革・民間開放推進会議(現・規制改革会議、議長・草刈隆郎日本郵船会長)の第三次答申は、「教育バウチャー(利用券)制度導入」をめざし、その前提である学校選択制を「十分に機能させる」と述べています。

 教育バウチャー制度とは、児童・生徒数に応じて学校の予算を配分するというもの。学校選択制で、児童・生徒が減る「不人気校」にとっては、予算削減に直結します。

PDCAの管理
 第三の狙いは、国・文科省による教育の管理と統制の新たな仕組みを確立することです。

 それは、「計画(プラン=P)→実行(ドゥ=D)→点検・評価(チェック=C)→改善(アクション=A)」のPDCAサイクルと呼ばれる仕組みで、イギリスやアメリカでさかんに導入されています。国が「計画」と「点検」の権限を握ることで、少ない予算で強力に教育を管理するものです。学力テストは「点検・評価」にあたります。

 文科省の実施要領にある「教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」という文言の意図はここにあります。

 名古屋大の中嶋哲彦教授は、学力テストは、「PDCAサイクルのパーツ(部品)である」として、「それぞれの地域や学校で自分たちで教育をつくっていく営みを全部押し流してしまう。文科省のつくった枠組みの中に、学校や地域を入れていこうとするものだ」(三月三十一日に東京都内で行われたシンポジウム)と批判しました。

英国では反省も
 イギリスの「教育改革」は、学校選択制を導入して、児童・生徒数に応じた予算を配分しました。こうした「改革」のてことしてナショナルテスト(全国統一テスト)の導入が必要でした。

 そのイギリスでは「本当の学力とは違うのではないか。テストと学校選択制でいいのか」という声が高まり、ウェールズでは、ナショナルテスト廃止が決まりました。英国の有力シンクタンク「公共政策研究所(IPPR)」は昨年末、イングランドの学校教育制度が一斉テストの結果を過度に重視している状況を批判しています。(小林拓也)
posted by マリンちゃん at 19:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 学力低下
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